二重星の回折像について
2014年10月 舟越 和己
1.二重星の分離基準
rを等光2重星のエアリ-ディスクの半径(秒角)とするとき、二重星の分離基準には次の3つの種類があります。スパロー(Sparrow)が一番厳しい条件です。
(1)レイレーリミット
2つのエアリーディスクの中心がちょうど半径rだけ離れている。
(2)ドーズ・リミット
レイレイレーリミットより85%中心が接近。
(3)スパロー・リミット
ドーズ・リミットより92%中心が接近。=レイレーリミットより77%中心が接近。
下記を参照;
http://www2.odn.ne.jp/~ccr61210/www2.odn.ne.jp/double.html
各リミットをフラウンフォーファー回折の式からグラフ表示すると次のようになります。
(1)レイリーリミット
(2)ドーズリミット
(3)スパローリミット
スパローリミットでは2つのピークはなくなり平らな頂上(flat top)となります。スパローリミットについて、
Hecht著 OPTICS Third Edition, P.465には「Astronomical studies of equal brightness stars have shown
that Sparrow's criterion is by far the more realistic.(等光二重星の研究はスパローリミットがはるかに
現実的であることを示している。)」と書いてあります。
2.分離基準と半値全幅(FWHM)の関係
■半値全幅(FWHM)とは?
正規分布のようなピークのある分布で、ピークの高さの50%のときの分布の幅を半値全幅と(FWHM:
Full Width at Half Maximum)いいます。これは接近した2つのピークを分離する能力の限界を示すとき
に使われます。
下の図は無遮蔽の開口の回折像の光の強度分布のFWHMを示したものです。この場合、FWHMの大きさ
は1.03λ/D(ラジアン)となります(注)。これはエアリーディスクの直径の42%(=1.03/2.44)の大きさです。
(注)回折像の強度[2*BESSEL(x)/x]2=0.5とすると、x=1.6162。従って、FWHMは2*1.6162=3.2324に
相当します。フラウンフォーファー紹介の3.3節から、x=3.83のときエアリーディスクの半径1.22λ/D
(ラジアン)に対応するので、x=3.2324の角度は(1.22λ/D)*3.2324/3.83=1.0296λ/D≒1.03λ/D
となります。
■接近した2つのピークの分離とFWHMとの関係
インターネットにある下記のシミュレーションのように、2つのピークが接近していくと、その重なった
分布は次第に2つのピーク間の窪みが少なくなり、やがて窪みが消滅し1つのピークになります。
これは2つのピーク間の距離がFWHMになるときに該当します。
http://cnmt.umin.jp/public/kiso/partial6.html
■ドーズリミットとFWHM
ドーズリミットの場合、2つのピーク間の距離は1.02λ/D(ラジアン)となり、ほぼFWHMに近い値に
なります。
尚、スパローリミットの場合は、2つのピーク間の距離は0.95λ/Dです。
このあたりの話の詳細は下記(Telescope OpticsのTepescope resolution)を参照して下さい;
Telescope resolution
3.中央遮蔽の場合
等光二重星分離の各リミットについて、無遮蔽の場合と遮蔽率50%の場合を比較します。遮蔽有りの
場合の強度分布が全体として下がっているのは、遮蔽による光量低下のためです。
上記のように、副鏡等の中央遮蔽が大きい時(50%等)、レイレー、ドーズ、スパローのどのケースでも
窪みが大きくなり、2重星の分離としては改善されます。
4.不等光二重星の例
例として牛飼座ε(等級差2.4等、離角2"9)の回折像を10cmの望遠鏡で見た場合の光度分布を示します。
伴星は第一回折リングの横に位置します。等級差は回折像のピークの差として現れます(等級差2.4等は
光量では9倍の差なので伴星の回折像のピークは0.1付近としています。